司法書士試験に合格しただけでは仕事はこない
司法書士試験に合格して、開業したら、すぐにどこかから仕事が舞い込んでくる。
かつての昭和時代には、司法書士は資格商売としてそういう時期もありました。
でも、今の時代は、司法書士試験に合格したから、というだけで仕事をお願いされることは、全くありません。
ここでは、司法書士試験に合格し、開業してから、どんな風に仕事を得ていくのか、について紹介しています。
司法書士になって確実に仕事をとってくる営業活動のポイント
司法書士試験に合格して登録しただけでは仕事はまったく来ません。
営業活動をすることではじめて仕事がまわってきます。
そんな司法書士の営業活動のポイントがあります。
営業の基本は人に会うことです。これは司法書士の営業も同じです。
ネットからの集客もありますが、やはり基本は人に会うことです。
事務所に座っていたら顧客がどんどん押し寄せてくる、というのは昭和の時代にはあったそうですが、バブルがはじけた頃からはすっかりなくなって、現在ではあり得ず大間違いの考え方です。
人に会う鉄則としては、誰かに紹介してもらうのがもっとも効率がいいです。
紹介を受けて訪問すれば、少なくとも会ってもらうことはできるからです。
学生時代の同級生や先輩・後輩、近所の知人、配偶者の知人、子供の父兄など日頃から名簿でリストを整理しておいて、結婚式やパーティー、同窓会にまめに参加するようにします。
また、独自の研究会や勉強会を開催するのも一つの方法です。
研究会といっても堅苦しいものでなくてもいいんです。
同業の司法書士だけでなく、企業や銀行のサラリーマン、税理士や弁護士、行政書士、大学教授など、様々な人を募って1カ月から2カ月に一回くらいで情報交換会を開きます。
軽い茶話会程度のものでもいいんです。
不動産仲介の方などを相手に、登記と不動産業務の関係ありそうなポイントの勉強会を開いて、登記の受注につなげている事務所もあります。
そこでは、自分の抱えている問題や疑問を出して意見を聞いたり、受けきれない仕事を回し合ったり紹介してもらったりすれば効果は大きいです。
もちろん紹介さえあれば仕事が入ってくるわけではありません。
1回や2回はお義理で仕事を回してくれても、結局は自分自身の営業力がなければ継続的な仕事は望めません。コネにあまりにも期待をしすぎてはいけないんですね。
今でも、自宅に毎日とはいわないまでも1週間に1度くらいはダイレクト・メール(DM)が送られてきているのではないでしょうか。
このダイレクト・メール作戦、意外と効果があるのです。
司法書士業は一般のDMとは異なって「他より安い」と勧誘したり、頻繁な物品の贈与は禁じられていますが、事務所の開設案内を新聞に出したり、折り込み広告ぐらいは可能です。
DM作戦に必要な費用は、封書なら82円、ハガキにすれば62円です。
100通出してもコピー代を入れても1万円程度です。上手く使えば非常に安い営業手段なのです。
問題は、この手段をいかに上手く使うかという点なんですね。
とにかく出せばよいというものではありません。
誰に、どんな内容のDMを送るかじっくり検討した上で送らなければ、かえって逆効果にもなりかねません。
DMといってもほとんどが自己紹介レベルになるかと思います。
挨拶状といってもいいでしょう。
出す相手は、銀行、不動産会社、建築会社、一般企業、税理士、弁護士など司法書士業務に関する所になるでしょう。そしてDMを出した後に訪問するというダンドリにするのです。
飛び込みで営業するよりはるかに効果的です。
DM作戦をどの範囲の地域から展開するかということですが、これも大きな問題です。
自分の仕事領域内に限定するのが得策です。
インターネット広告(PPC)を利用すると、ずいぶんと違う場所からの依頼がまれに来ることがあります。
あまりにも、離れていると、かえって費用倒れになりかねないのが、インターネット広告です。
DMならまず事務所の半径1キロメートルから始めることです。
DMを受けるほうも、近くて便利ということで興味をもってくれる場合が多いからです。
DMの内容はこの場合、印刷した立派なものより、かえって手書きの手作り風のものが効果的です。
やはり人の温もりに勝るものはないのです。
効果的なDMを作ろうと思ったら、自分の仕事への取り組み姿勢、そして事務所のイメージを統一したデザインの名刺・封筒・便菱・リーフレットを使うほうがいいです。
いわゆるCIを最初に考えてから行動に移すということです。
たとえば、地味でも心のこもったていねいな事業を考えているなら、それを表現しているデザインをビジネス・グッズに取り入れます。
また、自分は明るく軽快に楽しく業務をしたいと思えば、それを色や形に表現すればよいのです。
そのためにはまず自分の業務をどういうイメージにしたいかをハッキリさせる必要があります。
それさえ決まれば自分でデザインしてもよいしデザイナーに頼んでもいいかもしれませんね。
「何も最初からそんなことをする必要はないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、後で変更するとなると費用がかかりかえって不経済です。
最初に費用はかかるかもしれませんが、初めから統一イメージを打ち立てることです。
何よりも相手にこちらの考えている仕事に対する姿勢が伝わりやすいものです。
どうしても予算の都合でトータルイメージまでは無理というなら、たとえば名刺に自分の写真のシールを貼ったり、名前を大きく印刷したり、名刺に事務所の地図を入れたりと、工夫をこらすことです。
相手の印象は必ず違うはずです。
司法書士試験受験中に、合格後のイメージを考えるときに、自分をデザインするイメージを考えると、モチベーションがアップしますよね。
司法書士の顧客と信頼関係を築く四つのポイント
司法書士を開業して顧客との信頼関係を築くためには努力が必要です。
信頼関係を築く四つのポイントがあります。
信頼関係は努力なしには築けない
司法書士が顧客と信頼関係を築くには、
- 秘密を守る
- 客観的立場をとる
- 金銭に関しては慎重に
- 依頼者はお客様である
この四つが重要です。
司法書士業務は顧客の重要な秘密にタッチすることが多い仕事です。
顧客の秘密は絶対に守らなければなりません。
世間話のついでに、つい話してしまったではすまされません。
とくに司法書士の仕事は人からの紹介によって入ってきます。
ありがちなのが、紹介してくれた方が、「どうでした?」「どうなりましたか?」ということを聞いてくることがあります。こんなときうっかり話してしまって大問題になることだってあるんですね。
紹介者には言えない、依頼者との関係も大事。
そのあたりを認識しないで、ついついしゃべってしまうと、次の仕事は来ないです。
秘密保持は、自分をコントロールできるくらいでないと、まず失敗します。
司法書士の仕事は依頼者の代理人となるので、どうしても依頼者に肩入れします。
これは当然です。
でも、司法書士は社会正義の実現という使命を負っています。
社会正義はすべてに優先します。
たとえば、ちょっとこわもて(強面)の方からの依頼ですね。
ダイレクトに893さんとは言われないですが、そういった系統の方々の依頼です。
不正義に加担することは絶対にできません。
依頼者の利益をどこまで守ってあげられるかを考えることは、業務上当然のことです。
とはいえ、正当な利益を超えてまで依頼者に肩入れしてはならないのです。
最近は、ゲートキーパー法という法律ができてから、司法書士も本人確認をすることになっています。
どんなときも公人としての立場を忘れないことです。
司法書士の業務に関しては多額の金銭が関係します。
多額の金銭をいつも扱っていると金銭に関して感覚が鈍感になります。
これが落とし穴になります。
金銭トラブルは後々非常にいやな思いをします。
小額な金銭でも慎重に扱う習慣をつけないと、金銭に関する几帳面さが顧客との信頼関係を築くのを忘れてしまいがちです。
気づかないうちに依頼者に対して横柄な態度をとることがあります。
依頼者から御中元、御歳暮の贈り物をもらったり、接待をうけたりするのは、注意しなければなりません。
あくまでも司法書士は知的サービス業です。依頼者はお客様なんですね。
依頼者から贈り物があったり、接待を受けるようことがあれば、心からお礼をいったり、礼状をすぐに書くといった社会人としての基本的な感覚で対処することです。
中小企業とのつき合いでは司法書士は直接社長と接触することが多いのですが、こんなとき社員に横柄な態度をとる司法書士もまだいるんです。
会社がお客ということは社長だけでなく、そこの従業員すべてがお客様です。
従業員に対しても、ちょっとしたお土産をもっていったりするくらいの神経の細やかなところはもつべきです。
さらに依頼者を事務所に呼び出すのではなく、できるだけこちらから伺うようにしたいものですね。
資料が依頼者のところに揃っていることもあり、業務の効率から考えてもできるだけ伺うと、思ってもみなかった仕事が舞い込んでくることがあります。
司法書士の登記の仕事
登記の仕事は司法書士の仕事の中心となっていることが多いです。
司法書士の仕事の中心は、不動産や法人などの登記に関係する書類を作成することです。
供託に関しても代理できます。
特に登記については、不動産登記の仕事が中心になります。
法人登記になると、司法書士の仕事は、行政書士や弁護士、税理士といった方々と連携しないとできない場合もあります。
特に、自宅を購入された方がいると、税金が絡んでくるので、持分割合等があると、税理士の判断も必要な場合があるからです。
とはいっても、登記の仕事だけをする司法書士の実際は、以前より環境としては厳しいものかもしれません。
司法書士は、女性も多く活躍しています。
司法書士受験者の割合も、年々女性が増えています。
女性に限らず男性であっても大変ですが、結婚や出産などがある女性は、司法書士の仕事を続けるということを考えると、家族の協力が必要不可欠です。
数十年前と比較すると、母子家庭で働いている女性はいらっしゃいますが、女性ひとりで、子育てをしながら司法書士の仕事ができるかといえば、むずかしいかもしれません。
特に、年度末などの忙しい時期になると、連日残業が続くため、子供の発熱や病気になっても休めないからです。
司法書士は特に税理士、弁護士との人脈を大事にする
司法書士の仕事は最終局面での仕事が多いので、窓口となる税理士や弁護士との接点を持っていれば、仕事が流れるようになってきます。
司法書士にとって、税理士や弁護士との人脈も重要です。
とくに大きな都市の司法書士は、税理士と弁護士とのつきあいを押さえておかなければなりません。
司法書士の仕事は、基本的にはものごとが最終局面になったときに回ってきます。
ある事態が起こったとき、顧客はまずは誰に相談を持ちかけるでしょうか。
たとえば、会社が新しい会社をもう一つ起こしたいとするなら、まずその会社の顧問税理士に相談します。
理解できますよね。
なぜなら税理士は会社の財布の中身を全部知っているため、経営者は税理士に対して身内以上の信頼感を持っているからです。
そして税理士が「これは弁護士に相談してください」「これは司法書士に相談したほうがいい」と判断を下すわけです。
個人の場合でも相続の場合はやはり税理士に相談します。
この場合も登記の問題が出てきくると、最終的には司法書士に仕事が回ってくることになります。
税理士との間に太いパイプがあることは非常に大切なことです。
弁護士もそうです。
不動産を争っている場合だったら、訴訟で勝てば登記ということになります。
こういった場合には司法書士に仕事が回ってくるケースが多いわけです。
銀行とはつき合わずに税理士や弁護士とだけで仕事をしている司法書士もいるくらいです。
司法書士を開業して売上げ目標を設定する
司法書士を開業してから売り上げ目標を設定し、仕事を増やしていくことで信用や信頼を得ることができます。
開業5年目くらいで司法書士が経営者としての手腕を問われるくらいになるとベストです。
開業一年目に売上げ1200万円をめざす
司法書士開業1年目というのはたしかに大変な年です。
しかし都会でも地方でも開業してこまめに銀行や不動産会社、税理士事務所を回っていればやっていけるはずです。
あまり期待してはいけませんが、サラリーマン時代の給料とまではいかなくともある程度の収入の確保が目標ですね。
司法書士の開業をはじめて12カ月後に月の売上げを100万円くらいの目標にすると、上昇気流に乗りやすいです。
月100万円の売上げがあれば人を一人雇って、事務所の賃貸料、その他機器のリース料などを払っても自分の給料ぐらいは捻出できます。
もちろんあくまでコッコッとお客さん回りをしての話です。
何もしないで仕事が入ってくるのを待っているようだったら、ほとんど収入はなしと考えたほうがいいでしょう。
現在では、弁護士でも仕事がない位くらいで、司法書士の業務に弁護士が参入している場合もあるからです。
私の場合も、最初の2カ月ぐらいはほとんど収入はありませんでした。
しかしある日近くの銀行から「登記事項を調べてほしい」と依頼され、その日中に担当者のところに、登記簿(今の「登記事項証明書」)や関連する公図などを持参しました。
依頼された仕事は他の司法書士なら三日ぐらいかけているようです。
結局、その銀行には信用されて、その後抵当権や根抵当権に関する仕事がどんどん入ってくるようになりました。
どんな小さな仕事でも、たとえ儲けが少なくてもとにかく迅速に仕事をこなすlこれが新人司法書士が仕事を獲得する上での鉄則だと感じました。
5年目には売上げ3000万円から5000万円をめざす
開業5年目というのは司法書士にとっては一つの節目になります。
このときに補助者を3人雇えれば大成功でしょう。
これくらいになれば売上げも3000万円から5000万円くらいになっている場合もあります。
他に売り上げにシビアになる仕事を経験していないと、具体的なイメージはわきにくいかもしれませんが、補助者3人ということは仕事量としては相当なことをこなしていることになります。
開業1年目は自分の足で稼ぎ出し、5年目までに自分のパートナーとして働ける人を育てていくということになります。
事務所を成功させるか否かは、人を育て上げられるか否かにかかっています。
司法書士業界は狭い、とはいえ、近くの事務所がどんな経営をしているかはわかりにくいです。
でも、人を育てることができない事務所は、衰退か下り坂になっていくのがセオリーです。
開業して、5年目にして司法書士自身が経営者としての手腕を問われることになるのです。