司法書士開業のために必要な準備

開業した司法書士事務所

 

司法書士は、電話とパソコン一台があれば開業できる、というくらい大がかりな準備のいらない仕事です。

 

とはいえ、実際に司法書士試験に合格して、司法書士として開業する前は何をどうするのか、どういう仕事のスタンスでやっていくのか、は手探り状態になるんですね。

 

司法書士の書式の試験には、よく事例形式で、
「○○が来所して、法的手続きをしてほしい」
などと問題に書かれています。

 

まさかと思いますけど、司法書士の実務で書式の試験のような依頼のされ方は、まずありません。

 

司法書士開業のために必要な手続きは、

  • 事務所の備品の準備
  • 運転資金(お金の工面)

が中心になります。

 

開業するのは、地方か都会か、登記か登記以外か、も事務所の方針としてある程度方向性は決めておくのも司法書士開業のために必要な手続きのうちです。

 

ここでは、司法書士試験に合格してから、事務所の開業準備をするまでの手続きと、方針を紹介しています。

 


司法書士になって揃えなければならないものは?

 

司法書士になって事務所を構えるとなると、極端なことをいえば、最低、机と電話があればできる仕事です。

 

しかしそれは極端な話で、やはり能率と信用を高めるためにはある程度の機器をそろえたほうが利口です

 

どうしても揃えておいたほうがいい備品はあるんですね。

 

一般的な物を売るお店などとは違って、それほどたくさん揃える必要があるものは多くないので、予算と相談しながらそろえることになります。

 

逆に、小さいお店にはなくて司法書士の事務所で必須の物といえば、耐火金庫です。

 

仕事上重要な資料を顧客から預かったりするので、盗難、火災から守る手だては常に考えておかなければなりません。
耐火金庫だけは、予算が許すかぎり、頑丈なものを購入することです。

 

パソコンで司法書士の実務を効率化する

 

司法書士事務所の備品を揃える、といっても他の職種の仕事と比較すると、非常に少ないといえるでしょう。

 

FAXやコピー、パソコンは必需品です。

 

とくにパソコンは時間をできるだけ省力化して、パソコン1台に何百枚の文書が保存できるというメリットがあります。
ネット申請するにしても、PCは必需品です。

 

長期の展望で考えるならば、最初から申請書もワープロのソフトで書類を定型化していくのが合理的です。

 

そしてパソコンによる顧客の管理、経理、書籍管理、データベースの作成などは事務を効率化するのに威力を発揮します。

 

レベルとしてはそれほど上級者のように使いこなさなければならないレベルまでは必要ありませんが、日本語を入力できるくらいのレベルは必要です。

 

パソコンソフトには司法書士業務専用のソフトもあります。

 

パソコンソフトは常に進化するので、業者に任せっきりだとそれなりの費用がかかりますが、個人事務所で最初のうちは必要ないでしょう。

 

ソフトなどは、日本で一番大きい大手の事務所でも利用しているのが、Wordだったりします。

 

司法書士の仕事は、プレゼンなどを積極的にすることは少ないので、iPadのようなタブレットは、無理に導入する必要はないですね。

 

司法書士を開業するときにかかるお金

 

司法書士の事務所を開業するには、それなりのお金がかかります。

 

誰かがお金を用意してくれるわけでもなく、司法書士になったからといって、補助金が出るわけでもありません。

 

お金を工面することは、他の仕事と全く同じで、経営の知識や運用をしていかないと、司法書士と名乗ることすらできなくなるので、大事な点です。

 

司法書士会への入会には10万円以上程度のお金が必要

 

司法書士試験に合格して合格証をもらったら、自分が所属したいと思っている司法書士会で審査を受けます。
たとえば「東京で合格したけれど、仕事は鹿児島で」という人は鹿児島司法書士会で入会の審査を受けることになります。

 

普通は呼び出されて審査を受けます。

 

「これから司法書士としてやっていく場所はどこか、従来のやり方がわかっているのか、お客はいるのか」といったごく簡単な審査です。

 

入会の申込みの書類(戸籍謄本、写真、住民票、合格証書、身分を証明する書面)を提出して一週間くらいで返答があります。

 

身分証明書とバッジをもらって、10万円前後程度の入会金を払います。
もう司法書士として開業できるわけです。

 

仕事で必要なハンコも司法書士会でおよそ5万円程度で注文してもらえます。
ただし、事務所が特定されていないと入会できません。

 

ですから司法書士事務所に就職する人は、入会までに就職しておく必要があります。
もちろん自宅を事務所とすることもできます。

 

「立替金」のために500万円程度回転資金が必要

 

独立して業務を始める前に忘れてはならないのは「立替金」の問題です。

 

立替金というのは、たとえば1000万円の融資に抵当権を設定した場合、登録免許税が4万円かかります。

 

この4万円はもちろん融資を受けた人が支払いますが、とりあえず司法書士が立替える慣行があります。
そして司法書士は仕事が終わってから銀行に費用の請求をするわけです。

 

銀行の担当者は相手方に請求することになります。

 

どうしても、数週間のタイムラグが発生してしまうんですね。

 

今は電子マネーも流通している社会ですが、司法書士の実務、とくに不動産取引関係はまだまだ現金商売です。

 

この立替費用がばかにならない額になるのです。
1億円の融資なら40万円立て替えなければなりません。

 

戻ってくるお金とはいえ、立替金のために事務所開設時には500万円くらいの回転資金が必要になるわけです。

 

パートの主婦か司法書士受験生を事務員に雇う

 

開業したばっかりで、仕事もなく、電話もかかってこないうちなら、事務所に人を雇うことを考える必要はないかもしれません。

 

事務所の最大の出費は人件費です。

 

司法書士事務所では事務員を補助者と呼びますが、最初のうちは留守番電話とか携帯電話などを駆使してどうにかできますが、仕事が増えてきたらこれでは大変です。

 

銀行からの依頼で「登記事項証明書を取ってください」というのも多い仕事ですが、あまりにも通数が多いと自分で行っていては他の仕事が滞ってしまいます。

 

そんなときに取りに行ってくれる人や調査・閲覧してきてくれる人が必要なわけです。

 

司法書士の仕事は、「明日までにやってください」というような急な仕事が案外多いものです。

 

こんなときにせめて一人動ける人がいないと仕事は回転していきません。

 

ではどういった人を雇えばいいのでしょうか。
パートタイマーなら主婦の方がいいですね。

 

子育てがある程度終わった40歳前後くらいの方で、だんなさんの転勤がないような、末永くおつき合いできる方がいいでしょう。
その方と本当に気が合えば、将来正規の職員として迎え入れればいいわけです。

 

司法書士の受験生を雇うという方法もあります。

 

受験生は仕事に関して興味を持っていることが多く、習得するにも時間がかかりません。
それになにより、受験生が合格して司法書士になれば太い人脈にもなります。

 

司法書士の事務所を構えるのにベストは場所は?

 

独立開業となると司法書士として業務する事務所を開設しなければなりません。

 

事務所の立地条件は主に3つのパターンが考えられます。

  1. 銀行の近く
  2. 取引会社の近く
  3. 法務局の近く
銀行の近く

 

最近の都会型の司法書士事務所は銀行の近くに事務所を置くパターンが多いようです。

 

現在、銀行が絡まない不動産取引はほとんどありません。
不動産が動けば必ず銀行の融資の問題が生じます。

 

借り換えの場合や、不動産取引の場合も銀行を利用することが多いです。
そのためどうしても銀行とのつき合いが多くなってくるわけです。

 

取引会社の近く

 

取引会社には、不動産会社や建売会社、一般企業など様々です。
不動産会社などの仕事は不動産取引にまつわるものが多いです。

 

東京の中心部などは、商業登記だけで事務所を運営している司法書士もいるぐらいで、一般の会社を相手にするだけでも商業登記の仕事は相当数あります。

 

法務局の近く

 

法務局の近くというのは昔からの定番です。
20年ほど前は、特に東京法務局の出張所の近くには司法書士事務所が軒を並べていました。

 

法務局の近くは、司法書士にとって便利ということだったからです。インターネットの申請よりも、持ち込み申請の方が手間がかからず早かったから、という理由もありました。

 

また法務局の近くは、いわゆる飛び込みの客があるという理由もあります。

 

しかし現在ではこのような飛び込みの客を敬遠する司法書士も多く、どうしても法務局の近くにこだわることはないようです。

 

というのも、飛び込みのお客の場合、依頼人の本人確認や物件確認ができません。
確認せずに業務をこなすと、最悪の場合は事件に巻き込まれたりすることも考えられます。

 

もちろん飛び込み客だからといって理由なく仕事の依頼を拒否することはできないのですが、本人確認や物件確認ができない場合、そして実際に忙しい場合に限って断ることができるのです。

 

同じように、インターネット広告でお客を集める事務所もありますが、コストの割に報酬が見込めないのも欠点です。

 

最近の傾向としては、商売が活き活きと息づいている駅前が主流ですね。
お客も来やすいし、駅前には銀行もあります。

 

一時期ものすごくブームのようになった過払い訴訟の件では、足を運びやすいこといいとされていたりしました。

 

司法書士の事務所が存在するということは、その場所は司法書士にとって立地条件のよい場所だという証明でもあるので、事務所をどこに置くかは開業に際して押さえておくポイントです。

 

大都市で司法書士を開業するなら銀行から攻める

 

司法書士の競合が多い場所の都心部では、銀行を中心に営業して仕事が回ってくるようになれば、仕事としては成功している、と言えます。

 

実際に司法書士事務所を設立したら、積極的に営業を開始しなければなりません。

 

このとき、都市と地方では自ずとその方法は若干違ってきます。

 

まず都市型の場合は、銀行やマンション業者など企業が顧客の中心になります。

 

企業をめぐって司法書士同士が仕事の争奪戦をしなければなりません。

 

とくに銀行は仕事の中心部分になりますね。
しかし、新人がこの争奪戦に加わることは大変です。

 

そこでまずは銀行への挨拶回りから始めます。
そしてその銀行に預金してこちらからつき合いを始めます。

 

そうすれば、銀行も仕事を回してみるか」ということにもなるわけです。

 

世の中、もちつもたれずです。
機会を逃さずに、素早くていねいに対応していれば次の仕事も回ってきます。

 

とくに新人ほど素早い対応を心掛けることです。
今までつき合いのあった事務所なら翌日にしか仕上がってこなかった仕事をその日のうちに仕上げたとなればよい印象を持ってもらえます。

 

さらに、銀行関係の仕事は銀行が融資をする相手に抵当権や根抵当権を設定するわけですが、銀行がその顧客を司法書士に紹介してくれるわけです。

 

そこで、司法書士としては紹介を受けた顧客と直接、関係を築いていくことが重要です。

 

銀行が紹介してくれて、その銀行に請求書や領収書を提出するだけで最終的な顧客と一面識もないというのではちょっと味気ない話です。

 

お互いにメリットのある顧客なら個人的につき合うことも重要です。
顧客を通じてさらに仕事も出てくることもあるからです。

 

都市型の司法書士は銀行、マンション業者、税理士、弁護士などとのつながりの中で仕事を専門的に深め追求していくわけです。

 

これを極めてくると、

  • 「外国企業との合弁会社をつくるなら○○司法書士の得意分野だ」
  • 「会社設立に関してはあの司法書士に」
  • 「後見だけをしている司法書士」
というように専門分野が明確になってきます。

 

現に大都市での司法書士の中には商業登記だけを扱う司法書士もいます。

 

商業登記は不動産登記の仕事に比べると報酬は少ないのですが、月に何百件となると大変な報酬になります。

 

地方で司法書士を開業するなんでもこなせる司法書士をめざす

 

司法書士でも都市部で開業しているなら専門分野を、地方で開業しているなら何でもこなせる、というように街の法律家としての役割が仕事につながっています。

 

地方で開業している司法書士の特色は、「あの先生に頼めばなんでもしてくれる」という一言につきます。

 

農地から漁業権まであらゆる仕事をこなせる司法書士が望まれるのです。

 

弁護士の数が増えたとはいえ、まだまだ地方都市では「法律の専門職は司法書士だけ」という所も多いです。

 

司法書士の資格だけでなく、行政書士とか土地家屋調査士などの資格なども取得しておくことが非常に有利になります。

 

地方での司法書士は顧客の相談相手になれる人でなければなりません。
仕事ができるというだけでは信頼は得られず、ちょっとお節介なくらいの人のほうがいいかもしれません。

 

地方都市では司法書士はいまだに地域の名士なのです。
町議会や市議会の議員をしている人もかなりいます。

 

PTA会長は進んでやるし、町内会長だって厭わない。
要は社会的な奉仕精神がとくに必要なのです。

 

比較するならば、都市での司法書士は専門技術型、地方での司法書士は総合型といえるかもしれませんね。
司法書士というと「書類を作る人」ということで、司法書士がやっても同じと誤解されます。

 

しかし、プロとしての事態の見抜き方が経験によって蓄積されていくことで、司法書士の個人の特色が強く出てきて専門特化した司法書士が登場してくるのです。

 

何が起きても対処できるような司法書士を目指すなら、地方での司法書士で開業すると地域の方々に役に立つことになります。
開業して業務を開始してから仕事を受けるポイント

 

司法書士試験受験生&講師 ←いろんな勉強方法があって参考になる