実務の仕事内容と司法書士試験の内容は違う
司法書士試験に合格して司法書士資格を取得すれば、即開業ができる
よく司法書士の資格試験の予備校では宣伝していますよね。
でも、実際には各地の司法書士会などで開催されるブブロック研修や特別研修などを受けたり、実際に司法書士の実務を経験をして、勉強をしないと仕事ができる、というレベルにはなりません。
試験内容と仕事の内容が一致していないことが多いからです。
司法書士資格取得ではゴールではない
司法書士試験に合格できれば比較的すぐに開業できるのも、司法書士試験の特徴です。
資格試験の学校でも、それを売り文句にしているところもあります。
もっとも弁護士ほどではないにしても、事前研修を受ける必要はあります。
司法書士会がブロック研修という研修を開催していて、数万単位(4万円前後)のお金を支払って受講します。
司法書士試験はその意味で、実務に直結した試験です。
試験に合格する力があれば、不動産登記手続や商業登記手続きに関して十分な能力が備わっている、と考えても差し支えないです。
逆に、そこまで身につけなければ合格が難しいのが司法書士試験でもあります。
司法書士として開業するには、試験勉強と実際の登記手続きのズレ、書類の綴り方等、実務をスムーズに行うためのルールさえ身につければさしたる問題は起きません。
司法書士の資格予備校がメリットとして勧める資格のポイントと大きなずれがある
資格試験の学校を利用して、司法書士の勉強だけをしているときには、合格後の情報も予備校からですよね。
そこで、なんとなく司法書士に対して、合格したらいいイメージを持つかもしれません。
たとえば、
- 司法書士の報酬は良く、稼ぐことができる
- 人々の権利を守るやりがいのある仕事
などですよね。
これって、資格試験の予備校が、実際に経験しているわけではないわけです。
むしろ、司法書士の講座を受けてほしいための呼び水と言った方がいいかもしれません。
特に、報酬や年収などに関しては、
ってオススメしていますよね。
理由として、主に3つが言われています。
- 専門性が高い
- 数は少ないのに仕事は多い
- 現代社会のニーズに合う
ところが、実際の現場では大きくずれがあります。
専門性に関しては、今では法務局が申請書のひな形を、かなり詳しくインターネットで公開しています。
会社や個人でも、空白に当てはめさえすれば、ほとんどの登記は本人申請でできてしまうくらいです。
さらに、仕事は多いというのは実は逆で、平成20年からの10年間で登記の申請件数は、30パーセントも減っています。
登記をする司法書士、という点からすれば、この先、減ることはあっても増えることはまずないでしょう。
だから、現代社会のニーズに合っているか、と考えても、言われたことをきっちりするだけの登記ばっかりしていた人が、いきなり発想を変えて、違うことなんてできないです。
もはや、司法書士は、誰にでもできないプロフェッショナル性が要求されるわけではないんですよね。
司法書士試験に出題されない相談を受ける事があるのが実務
いままでは、それだけでもよかったのですが、最近でははじめから雑多な相談が飛び込んできます。
たとえば紛争に関しての交渉用の文章など、試験でも書いたことのないことが、お客さんは当然に効果的な文章を書いてもらうためにお願いしたりもします。
一時期に比べてかなり下火になってきた債務整理などの借金問題も相談されたりします。
成年後見の分野でも民法の条文知識しかなくても、いきなりそれを生かした支援を求められたりします。
ただ、司法書士試験には、こういった問題はほぼ出題されません。
成年後見の分野は、司法書士の専門分野とイメージしている方も多く、司法書士に相談すれば何とかなる、と期待して相談に来ます。
このような期待を裏切らないためにも、リーガルサポートにも所属して、各地の支部である司法書士会などで行われる研修に積極的に参加してノウハウを身につけていく必要があります。
差別化しにくい司法書士がする「登記」の仕事
登記以外に債務整理や後見の仕事も増えている司法書士の仕事ですが、メインはやはり「登記」です。
個人事務所や、補助者がいても数人という司法書士事務所だと、登記だけを仕事をしているところもいまだに多いです。
以前勤務していた司法書士事務所の人は
「登記の仕事は金太郎飴だ」
とよく言っていました。
確かに、登記だけを仕事にするなら、依頼される内容も、結果として返す内容も、誰がやっても同じ結果になるわけです。
登記は誰がやっても一緒の結果になるので、ほとんど型が決まっているルティーン業務のようなものです。
登記の仕事は、中でやっている方としては、内容や工程に工夫の余地が少ないので、楽、といえば楽です。
逆に言えば、外から見たら、司法書士はなかなか差別化できないんですよね。
いくらかは、司法書士自身の人柄や、丁寧さで差別化はできますが、仕事内容が登記以外に大きく変わる可能性は低いです。
「他の司法書士事務所と違って、私の事務所はこういう点が優れています」という営業が出しにくいということです。
できても、他の士業との提携、くらいです。
その点、弁護士など法律事務所は、仕事の入り口も大きく、結果もどうなるかわからないダイナミックさがあります。
訴訟にかぎらず、M&A、企業法務、探偵業などなど業種も広いです。
行政書士も「○○が専門でやっています」と、専門分野を持ったり、さまざまな業務ができます。
だからと言って、差別化できない司法書士の仕事は不安、と悲観的にならなる必要はないです。
「あれも、これもできます」というと、仕事のパターンが増えすぎて、効率化ができなくなります。
士業として「登記」という仕事をすぐにスタートが切れるのは司法書士の魅力です。
すぐに開業できるのは司法書士の特徴ですが、開業したときからが真の勉強のスタートになります。